トウキョウトガリネズミの夜間活動1

これは赤外線ライトを使用して、AX-60で撮影したものです。トウキョウトガリネズミを含めトガリネズミ類は、ほぼ夜間に捕獲されます。22時から2時の間に捕獲されることが多いです。したがって、良く夜行性なのかと質問されますが、採餌行動は日中でも頻繁に見られますので、夜行性というのは適切ではありません。

これまでブログに掲載してきた動画や写真は、日中やライトを照らした中で撮影したものが多いですが、それと比較してもこの動画のトウキョウトガリネズミの行動や動きの速さなどは全く変わらないことが判ります。

トウキョウトガリネズミの目は小さく、コオロギがほんの1~2cm程度前方にいえも動かずじっとしていますと、その前をあっという間に通過してしまいます。それは、夜間でも日中でも変わりません。目の構造・組織についての研究はなされていませんので詳細はわかりませんが、人間が物が見えていると考える状況・概念とは異なっていることだけは確かです。

真夜中の食事

 

トウキョウトガリネズミが、餌を食べたり、水を飲んだりする映像は、なるべく自然環境に近い状態で飼育しますと、草や流木などを入れているため撮影しにくい状況になってしまいます。そこで、衣装ケースを2つ繋げて一方を餌と水と隠れ家用に木の箱だけ、もう一方はチップと流木のみにして、自動撮影装置でどれくらいの頻度で餌や水を飲むのかを調べることがあります。

上記の映像は、夜中の0時58分水をのみ、衣装ケースの隅まで行ったあと、ゆでミルワームを木の箱の中で食べようを持ち込んでいるところです。夜間で真っ暗な飼育小屋の中でも、迷うことなく行動していることが判ります。

 

トウキョウトガリネズミの歩く?走る?スピードは時速2km超え?!

上記の映像のようにトウキョウトガリネズミがケースの端から隣のケースへ移動するスピードは、1秒未満で約70cmは移動していることが、ケースの大きさから判ります(メーカーで公表しているケースの長さは74cm)。

映像では、特に驚いている様子もなく、普通に移動しています。これを歩いているというのか、走っているのか、トウキョウトガリネズミ本人に聞いて見ないと判りませんが、これが実際の普通の移動速度になります。正確には、カメラの前から隣のケースへ移動距離はカメラの長さが8cmありますので、66cm程度となります。壁面にきっちりとつけている訳ではないので、切りの良いところで65cmの移動距離と仮定します。

実際には1秒かかっていませんが。1秒で約65cmですから、3600倍すると1時間に234,000cm=2,34km、え!時速2kmということですか?

人間の歩く速度は時速4km程度と言われますから、人間の半分の速度ですが、歩幅は、トウキョウトガリネズミは人間の1/42.5ですから、人間が時速85kmに相当する距離を移動すること似ていると言えるでしょう(トウキョウトガリネズミの前足と後足の間隔は2cm程度で、人間は身長が170cmで歩幅85cm程度)。1時間もトウキョウトガリネズミは移動しませんから、時速85kmで歩く人間相当と言ってみても意味があるとは思えませんが、歩幅が小さいということを考えると、結構高速移動しているとは言えるでしょう。

ガリガリしている雪だと穴が掘れないトウキョウトガリネズミ

昨日、トウキョウトガリネズミは凍った雪だと掘れないということを書きましたが、どの程度なのかを示したものが下記の動画です。

一度プラスの気温になった後の庭の雪を入れたケースに、トウキョウトガリネズミを放したものです。スコップでひと掻きしたものをそっと入れたものです。偶然できたヘコみが一カ所あったのでそこに隠れようとしますが、不十分なのでそこを掘ろうと頭からアタックしますが、堅くて掘れないようです。

堅さは、人間が転んで素手で手をついたら、小さな氷のつぶつぶを感じるくらいのざらざらしている状態です。むしろ、転んだ時に擦り傷ができるか出来ないか程度のガリガリ感のある状態と言った方が似ているかもしれません。

下の映像には載せていませんが、狭い隙間に入ろうと探していますが、結局落ち着つけるような大きさと快適さのある場所が見つからず、うろうろしていましたので、5分ほどで回収して、いつもの飼育ケースに戻しました。

冬はどうしている?

北海道に生息しているトガリネズミの仲間で、トウキョウトガリネズミ、オオアシトガリネズミは、冬眠しないことは飼育して確認しました。私は、ヒメトガリネズミとエゾトガリネズミは、冬季に野外で飼育をしたことがありませんので、冬眠していないことまだ確認できていません。しかし、両種とも冬眠はしていないと推察されます。ヒメトガリネズミについては、霧多布湿原センターに勤務していた時、2月に建物に中に入ってきた個体を捕まえたことがありますので、冬眠していないと考えます。

さらに、積雪期にどこで、どのように生活しているのかについては、全く判っていません。雪上を歩くオオアシトガリネズミの紹介は以前しましたが、ずっと雪上とは考えられません。したがって、雪の下での行動が主体と考えるのが自然です。

トウキョウトガリネズミの飼育下での行動を見ていますと、雪にトンネルを掘りますが、堅く凍っていると掘れないようです。多分、雪の下では、映像のように枯れ木とか枯れ草などと雪の間にできた空間を、トンネルでつなぎなから活動しているのでないかと推察されます。

トウキョウトガリネズミの耳

人間の耳介は哺乳類の中では小さく、その形はすこし複雑な形になっています。外側からの上から、耳輪(じりん)、対耳輪上脚(ついじりんじょうきゃく)、対耳輪下脚(ついじりんかきゃく)、耳甲介(じこうかい)、外耳孔(がいじこう)、対珠(ついじゅ)、耳垂(じすい)=耳たぶ というように、でこぼこしています。

イヌなどの耳介が長い哺乳類は、耳介の表面はなめらかなものが多く、外耳道の方が複雑な形をしているものが多いです。

では、トウキョウトガリネズミの耳介は、どうなっているのでしょうか?

トウキョウトガリネズミは、耳があることがはっきり認識できます。(私は、意外と大きいと感じます。)写真などでみると毛に覆われており、イヌの耳介のようになめらかのように見えます。しかし、よく見ると人間に似て複雑な形をしています。

砂に穴を掘るトウキョウトガリネズミ

トウキョウトガリネズミが砂に掘った穴

2020年2月15日に雪に穴を掘るトウキョウトガリネズミの映像に書きましたが、本日は砂についてです。

トウキョウトガリネズミは雪だけではなく、床材として土を入れると短いトンネルを掘ることもありますが、穴を掘るところや掘った跡を確認することがほとんどありません。むしろ、草と土の間に通り道を作るような痕跡の方が良く確認されます。

昨年は、海岸で捕獲したトウキョウトガリネズミの個体には、床材として捕獲した場所の砂を入れました。そうすると、翌日は写真のように砂の各所に穴があいています。1ヶ月くらい経過すると砂を交換しますが、同じような穴があいていました。

何をしているかといいますと、砂の中にいるハマトビムシなどの餌を探しているようです。現地では、このように砂に穴があいているところは確認していません。たぶん野外では、ハマトビムシ類はそんなに砂の中、深くまでは潜っていません。砂は捕獲地から持ってきて入れるため、必然的に砂がまざることになります。したがって餌となるハマトビムシ類が砂の中で混ざるため、野外より深い位置にハマトビムシが居ることなります。したがって、普通より深く掘るため、はっきりした穴になってしまうようです。

トウキョウトガリネズミが掘った穴

氷を囓るトウキョウトガリネズミ

連日寒い日が続いています。今年は、昨年末からほとんどプラスの気温になっていません。飼育小屋は、当然マイナス気温で水分はすべて凍っています。

ゆでたミルワームも数時間すると凍ってしまいます。餌替えをする時に、水も毎回交換しますが、これもまた数時間で凍ってしまいます。水替えをしますと、大概はすぐに飲みに来ます。喉が渇いているのかもしれません。

しかし、いずれにしても、水は凍ってしまいます。凍った後はどうするかといいますと、氷を囓って水分補給をするようです。それは、オオアシトガリネズミでも一緒ですが、なぜかトウキョウトガリネズミは氷の上で糞をすることが多いです。

氷を囓る時に踏ん張るからなのでしょうか?餌や水が入った器内では糞尿をすることを基本的にしないトウキョウトガリネズミですが、氷の上では、かなりの頻度で糞をしています。

これに対して、餌や水の入った器内に平気で糞尿をするオオアシトガリネズミは、凍った水の上では糞をしていません。器と体の大きさの関係で、氷を囓る際に糞が器の外に落ちてしまうのかもしれませんが、冬になると水入れがきれいであることに、いつもある意味感動します。

現在は、トウキョウトガリネズミの飼育ケースには雪は入れていません。普通は雪をなめている方が多いのかもしれませんが、雪を入れていても、氷を囓った後はありました。

中央部の筋状にへこんでいるところ(溝状になっている)が、トウキョウトガリネズミが囓った跡。氷上部の茶色俵状のものは、トウキョウトガリネズミの糞

トウキョウトガリネズミの夏毛と冬毛

今日は、北海道もかなり荒れました。ホワイトアウト状態になるほどの激しい風と雪でした。それでも、トウキョウトガリネズミは元気です。

動物には、夏毛と冬毛があります。変化が激しい種は、ユキウサギ、イイズナ、オコジョに代表されるように、夏は体全体が茶色で、腹面は白っぽいですが、冬は体全体が真っ白に変化します。

さて、トウキョウトガリネズミはどうなるかといいますと、下図のようになります。個体差がありますが、夏毛は全体的に茶色で、腹面は白っぽいです。写真の個体は、どちらかというと黒っぽい個体です。冬毛は茶色と白の差がはっきりわかるほど白くなります。

夏毛
冬毛

 

冬毛には、白い差し毛が入ります。個体によりますが、夏より冬はかなり白っぽく見えます。よく見ると意外とモコモコした感じがあります。光の当たり方で白っぽさの印象はかなり変わります。いずれにしても、冬になると茶と白のツートンとはっきり判るようになります。

冬毛のトウキョウトガリネズミ 腹の白い毛の状態を見てください。暖かそうです。
冬毛のトウキョウトガリネズミ 全体的に白っぽい個体

トガリネズミを見分ける7(野外で持ち歩く計測道具)

野外で見つけた死体を詳しく調べるには、持ち帰るのが一番です。しかし、持ち帰って標本を保管したり、解剖したりできる研究室や研究機関などに所属していなけば、普通はとても困難です。

したがって、写真を撮るということになりますが、哺乳類を同定するには、全体や四肢なのどの大きさが判ることが必要だとお伝えしてきました。

でも、そのような死体に出会うことは、そのほとんどが突然です。そのためには、普段からの準備が必要です。今日はその持ち物について紹介したいと思います。

普段携帯するものは、最低限物差しと使い捨てのゴム手袋です。物差しは、1mの折り尺、2~3m程度のコンベック、30cmのステンレス直定規のいずれかをおすすめします。

複数の物差しを持って行くのは、調査でも行うつもりでないと無理があります。そこで一つと言われたら、黄色い折り尺をおすすめします。L字形にして置くと縦横の大きさが判るように写真に写し込めるからです。しかし、体が小さいトガリネズミなら、30cmのステンレス定規の方が最小メモリ単位が0.5mmで材質状表示誤差も少ないですので、現場で小さいものをできるだけ正確に計る場合には一番です。コンベックは、持ち運びは一番楽ですし、大きな物を対象とするときは特に便利です。いずれの物差しにも、計測できる長さには大小がありますが、短いと全体像がわかりにくいですし、必要以上に長いと持ち運びが面倒なので携帯しようとしなくなりますので、忍ばせておくバックやポケットの大きさと相談してください。

L字しておくと縦横の大きさがわかりやすい(イタチ類の足跡)
大きな動物には、コンベックは長くて使い安い(イタチ)

 

なお、使いすてのゴム手は、もし死体に触る必要があった場合に備えるためです。素手で死体を触ることは、病原菌などに感染する恐れがあるので、絶対にしなでください。現場ではどうしても触る必要がという状況になることが多いので使い捨てのゴム手袋は必要です。