トガリネズミの巣の作り方 その2’(仮映像・・・)

ダメです。掲載したかった映像が見つかりません。4時間以上探しましたがみつかりませんでした。

そこで、昨日書いた時点で掲載する予定だったものとは異なる映像をアップします。トウキョウトガリネズミが、草の中で寝ている様子と体を回転させて巣を整えている映像です。基本的に、巣を作るときの方法と同じ動作です。

確か16~17年前の映像で、嶮暮帰島で捕獲できるようになって2~3年後の映像ですので、とても画質の荒い映像になっています。2年前に別の角度でもっとはっきりした映像が撮れたのですが・・・。

目的の映像が見つけられましたら、後日アップします。

 

 

トウキョウトガリネズミの巣の作り方 その1

トウキョウトガリネズミ、ヒメトガリネズミ、オオアシトガリネズミは、草で球状の巣を作ります。(エゾトガリネズミについては、あまり飼育していませんのでまだ十分な確認が出来ていませんが、多分同じように作ると思います。)

作り方には、幾通りかの方法があるようです。まず、巣を作りたいと思う場所に、近くのあるときはその場で草を、全身を使って丸めながら引き込みますが、近くにない場合は、まず材料を集めます。

上記の映像は、下図のような配置して撮影しています。撮影時には左側のケースは床材としてチップを敷いてその上にほぐした牧草を約5cm厚で敷き詰めた状態になっていて、餌と水は、撮影しているケースにしか無い状態になっています。映像の前半は、数時間前に現在のケースに入れたばかりの状態です。その後床がアクリル版のままでしたので、流木の下に草を敷いたら、草を集める行動が撮影されました。

通常は草を厚く敷いていることが多いですので、映っているような引き込みは、あまり見かけませんが、必要であれば草を集めてくることが判ります。

赤枠で囲っている配置で撮影している。飼育ケース内の流木などの配置状況は撮影時とは異なる。

トガリネズミを見分ける6(白くて斑でもトガリネズミ)

パンダがらしたオオアシトガリネズミ

上記の写真は、オオアシトガリネズミです。

トガリネズミには、体の一部が白化した個体も時々見られます。全身白く、目が赤くなっているアルビノとは異なり、体の一部が白くなっているだけです。

アルビノは、極めて希です。それに対して、体の一部は白化した個体はトガリネズミでは時々見る事ができます。今回のようなパンダみたいな模様の個体は、私もこの1例だけですが、尾の先が白化している個体はたまに見ることがあります。白くなっている大きさは、個体によってそれぞれで、気をつけて見てみないと気がつかないほど白い部分が少ない個体もあります。

これだけを見ますと、図鑑に載っていないので「新種か?」と思ってしまいがちなのですが、北海道では普通にいるオオアシトガリネズミなのです。この場合は、最終的には、上顎の歯の形状を確認することで同定(確定)することになります。

誰かに同定してもらいたいと考えるなら、本当は死体をアルコールやホルマリンで液浸するか、冷凍して、死体を送ることが一番確実です。しかし、訓練したことのない人が行いますと、病気などに感染する可能もあるので、まずは写真を撮ることをおすすめします。上記のように全身の大きさが判るようにスケールと一緒に写った写真を最低1枚、あとは各所を拡大した写真を数枚撮って送れば、種を確定できなくても、種の候補はある程度絞り込むことができます。全体の大きさが判ることが、種名を絞り込む重要な情報であることには変わりありません。詳しい方法は、別の回で書きたいと思います。

 

 

トガリネズミを見分ける5(後足長を測る)

背中が丸まっていたら伸ばして測るしかありませんが、実際は死後硬直していたりすると堅くて伸ばすことが困難です。無理矢理伸ばすと脊椎を折ったと感じることもあります。そうすれば、実際より長くなってしまいます。

トガリネズミを見分ける2で「何って適当だ」と気がつかれた方は、測り方で大きく計測値が変わるではないかと気づいた方です。それで、「種の同定(決定)ができるのか?」と思われたと思います。実は哺乳類の頭胴長や全長なんてそんなものなのです。図鑑や図書に書かれている計測値は、あくまでも参考値であって絶対的なものではありません。種によりますが、記載されている数値から多少外れているから違う種というものではないのです。そもそも、種を同定する基準としては、測り方や成長過程で大きく変化する部位は使われていません。

成長過程によって、頭胴長や全長が大きくなっていくため、トウキョウトガリネズミより大きなヒメトガリネズミやエゾトガリネズミやオオアシトガリネズミは、トウキョウトガリネズミの成獣と同じ大きさの時があるということになるからです。したがって、トガリネズミでは、頭胴長や全長が種の判別にとって絶対的な判断基準とはならないのです。参考値です。

しかし、歩き回れる状態になった時には、各種の特徴の大きさにほぼ達しているのが部位が、後足長になります。そして、トウキョウトガリネズミだけは、10mm未満なので、10mm未満であれば、まずトウキョウトガリネズミと考えて良いということになります。

後足長の測り方は、踵から指先まで(爪は入れない)で、実際に地面に付いた状態の形になるようにして測ります。ここでも、あまり強く押しつけると実際より大きくなり、軽く丸まった状態のままですと実際より小さくなるという間違いを起こす危険があります。実際に9.7~10.3mmの範囲の値は、後足長にかける圧力によって差がでるため、慎重に測る必要があります。

後足長の計測方法例

 

トガリネズミを見分ける4(同じ4cmだが・・)

いざ探しますと、野外におけるで良い写真がなかなか探せませんでしたので、飼育中に死亡した個体で撮影したものです。(良い写真が見つかればあとで差し替えます。)

まず、上の写真を見てください。オオアシトガリネズミですが、野外では、こんな感じて丸くなって死んでいることが多いです。この場合、スケールで測ると4cmとなります。この場合、多くの人は体長が4cmと思います。この場合の4cmは、体長=頭胴長=全長と思ってしまう形をしています。そこで、トウキョウトガリネズミの体長(頭胴長)4cm程度という情報から、4cm=トウキョウトガリネズミではないかと思ってしまいます。

しかし、これまでトガリネズミを見分けるを読まれた方は、間違いだということに気がつかれたと思います

下の写真を見てください。トウキョウトガリネズミです。実際に自然死したトウキョウトガリネズミは丸くなっていて、こんなに伸びていることはありません。この個体は、死亡した個体を計測した後、チューブに入れて冷凍にしていたのですっきり伸びています。これが頭胴長4cm程度という状態なのです。

下の写真で、改めて比べてください。体長4cmという情報だけでは、如何に誤認する可能性が高いかが、お解り頂けれると思います。

 

 

 

 

トガリネズミを見分ける3(計測方法と体長・全長・頭胴長・尾長の区別を整理する 2)

哺乳類については、図に示したように陸生と海生で、陸生では小型・中型・大型計測部位や測り方が若干異なります。

前回「頭胴長=体長」と書きましたが、実際は、陸生は頭胴長、海生は体長を使います。いずれも吻端から肛門までを計測しますが、陸生で体長を使うことは最近はありません。また、大型では赤点線のような測り方をする場合もあります。大型哺乳類は、背骨を伸ばして計れないからです。

尾長は、肛門の付け根か尾骨端までを計ります。体毛は摩耗したりするので体毛は測りません。前足長や後足長も、爪は伸びたり摩耗したりするので計りません。「踵から爪の付け根まで」となります。

分類群によって、種の同定に重要となる部分が異なります。ネズミ類やイタチ類では、尾長の長さが同定するために重要な要素となります。また、トガリネズミ類やネズミ類は全長が重要な要素となりますが、大型哺乳類では、全長は重要な要素ではありませんので、全長を測ることや全長という表現は基本的に使いません。

海獣類は吻端から肛門までを体長(=頭胴長)としていますが、尾が無いからです(尾に見えるのは足)。すなわち体長=頭胴長=全長ということになります。しかし、全長とは使いません。大型哺乳類では、尾があっても、短かったり、尻に沿って垂れていたりすることから、大型哺乳類で体長を使用するとイメージ的に体長(頭胴長)=全長と捉えてしまう人も多いです。

以上を整理しますと「吻先から尾の先まで一直線に伸ばした状態で計測する。吻端から肛門までを頭胴長、肛門から尾端までを尾長とする。尾長は摩耗や伸びたりする毛は計らず、尾骨端までとする。また、頭胴長+尾長を全長とする。なお、海棲哺乳類については、頭胴長を体長とする。」ということになります。

「吻先から尾の先まで一直線に伸ばした状態で計測する。」ということと、「哺乳類の大きさとは頭胴長なのか、体長なのか、全長なのか」という2つのことが、曖昧な状態の人が多いというのが現実だと思います。そもそも、死体は大体が丸くなっていることが多いですので、まず小さく見える傾向にあることも影響していると思います。したがって、大体の大きさを測ってもオオアシトガリネズミをトウキョウトガリネズミと思ってしまう方も多いと実感しています。

 

 

 

最低気温-16.9℃を記録しました。

 

本日、飼育小屋のデータロガーを数日ぶりに確認したところ、昨日の朝に、最低気温-16.9℃を記録していました。1月6日はー15.5℃でしたので、久しぶりの記録更新です。アメダスの記録では、1月6日-20.4℃(24:00)、1月10日-21.9℃(6:30)でしたので、5℃程度小屋の方が暖かいことになります。

本格的に野外で飼育しいくを始めて2冬目になりますが、昨年とは比べようもないほど連日とても寒い日が続いています。生きたコオロギやミルワームは、すぐに動かないなり、ゆでミルワームと水は当然凍ってしまいます。水を換えたら、凍らない間に水を必ず飲むようです。それでも、足りないので凍った水には、囓った跡が残っています。

でも、トウキョウトガリネズミは元気にしています。草に登っている時間は短いですが、餌替えの時には必ず姿をみせてくれます。

 

トガリネズミを見分ける2(計測方法と体長・全長・頭胴長・尾長の区別を整理する 1)

哺乳類の死体を見つける機会が意外に少ないですので、トガリネズミを見るととても小さいですので、その大きさをよく確認しないで、小さい=トウキョウトガリネズミと思い込まれる場合が良くあります。

最近の哺乳類図鑑には体の大きさ記載は、大きく体長のみ、頭胴長と尾長、頭胴長のみの3つパターンで書かれています。体の大きさを示す用語については、意外と丁寧に書かれていないため、ここで整理したいと思います。

哺乳類の体の大きさは、鼻先から尾の端までを一直線に伸ばした長さを「全長」を基本とし、「全長=頭胴長(吻端(鼻先)から肛門まで)+尾長(肛門から尾の端まで)」となります。そして、「全長=頭胴長(体長)+尾長」として使われるのが基本です。

全長の一直線とは、頭骨から尾骨までが一直線になった状態を指します。従って、上図のように背中を下にして一直線に伸ばして測ります。哺乳類が死亡しますと、大概は多少なりとも丸くなっていますので全体を伸ばして計ります。しかし、押さえ過ぎると頸椎などが外れたり折れたりしますので、実際よりも伸びてしまうことがあります。また、脊椎は頭骨の後頭部端に接して連結しているわけではなく、後頭部端よりも少し内側で連結していますので、頭骨長の一部と脊椎の一部は重なっていることになります。これが外れると大きく伸びることになります。よって、脊椎などの骨を外したり、骨折させたりしないようにして、できるだけ一直線になるよう伸ばして全長を測るということになります。

何って適当だと気がつかれた方は、さすがです。その続きは次回へ。

 

 

トウキョウトガリネズミを見分ける 1 <直接トウキョウトガリネズミとオオアシトガリネズミの体格を比較する>

トウキョウトガリネズミでは無いかと、時々問い合わせを頂くことがあります。その約95%がオオアシトガリネズミです。ネットで検索すると大きさの書かれ方が間違っていたり、曖昧な書き方だったりしますので、トウキョウトガリネズミを発見したと思われる見たいです。

これから数回に分けて、トウキョウトガリネズミを見分けるための基礎知識を整理したいと思います。問い合わせの際に同定に必要な観点も紹介しますので、ぜひ参考にして頂けばと思います。

今回は、オオアシトガリネズミとの体格差をまず確認をしてください。死体による比較写真は時々ありますが(このHPの基礎情報にもあります)、今まで生きた状態でトウキョウトガリネズミとオオアシトガリネズミが同じ画面でサイズ比較した映像はないと思います。そもそも、野生下でも生きた個体を同時に見る事自体まず無いと思いますが、生きている状態をまず見て頂けるとその大きさの差がはっきりわかると思います。

映像の後半に、生きたミルワーム(全長約2cm)が入れてありますので、それを基準に大きさを確認してみてください。下の写真はその場面を拡大していますので、参考にしてください(クリックすると大きくなります。なお、トウキョウトガリネズミは、小さいアクリルケースに入れた上でオオアシトガリネズミを放したケースに入れてありますので、アクリル板2枚越しの映像になっているため、ぼけています。)

左:オオアシトガリネズミ、右:トウキョウトガリネズミ

オオアシトガリネズミはハマナスに登らない?

トウキョウトガリネズミが捕獲されるハマナスが生育している場所で、オオアシトガリネズミも捕獲されます。オオアシトガリネズミは、ハマナスに登るかといいますと、登ったところは見たことがありません。

ハマナスを入れて、両種を同じ条件で10分間飼育ケースに入れたところ、トウキョウトガリネズミは8分後にはハマナスに登りましたが、オオアシトガリネズミは最後まで登らないどころか、最後までハマナスの枝には興味を示さなかった感じでした。急に細くなるところには、行かないという印象をうけました。

両種とも初めての環境ですので、必ず隅々まで確認作業を行います。まずは、地表と物陰や隙間を探索します。トウキョウトガリネズミは、時間が経つと必ず草などがあれば、登って確認する行動が見られますが、オオアシトガリネズミは土を掘ったり、草の中に潜ったりしますが、積極的に草に登って確認するような行動は見られません。オオアシトガリネズミが、全く草に登らないわけではありません。また、野生下で、木に登ったオオアシトガリネズミを見たことがありますが、トウキョウトガリネズミと比較しますと、普段から積極的に草などに登るような行動は見られません。オオアシトガリネズミは、ハマナスを登るのかはまだわかりませんが、ハマナスのトゲを利用して登るような器用なことはできないのではないかと私は勝手に思っています。時間が経てば登るのかもしれませんので、これからも試してみたいと思います。

トウキョウトガリネズミを見ていますと、地表の安全確認に納得するまでは、登るという行動は後回しになっているように見えます。草の上の危険性は、地上よりも少ないと考えているかのようにも思えます。