ハマナスの実や枝葉は、トウキョウトガリネズミが乗ってもビクともしない

ハマナスの実は、少し大きめのプチトマトほどの大きさで、表面は堅くしっかり付いていますので、体重2gのトウキョウトガリネズミが乗ってもビクともしません。枝もビクともしませんが、1枚の葉の上にのるとさすがに少しゆれますが、それでも不安定というほどでもありません。

よく見てみるとトゲのあるところと無いところをうまく使い分けているようです。ちなみに、ハマナスの実は熟してもトウキョウトガリネズミは食べません。

長時間留まっているところにはトゲは無い

トウキョウトガリネズミは、ハマナスのトゲを利用して登り降りをしていますが、ハマナスの枝に上に居る時は、トゲが無いところやまだ堅くなっていないところに長時間留まっています。やはり、堅いトゲの先が当たっているような状態は、痛いのでしょう。

映像を見ていますと、トゲが無い茎の部分を利用しているのがわかります。特に降りる時は、トゲがある茎を利用するだけではなく、トゲの無い枝を利用して移動や降りたりします。トゲに触らないで移動できるルートがあれば、それを選んでいるように見えます、

ハマナスのトゲを利用して降りる

ハマナスのトゲを利用して登ることを昨日紹介しましたが、降りる時もトゲを利用しています。映像は、昨日同様にハイスピード録画で撮ったものですが、動きが速く、オートフォーカスだと追い切れませんので、最初にトウキョウトガリネズミがいた茎のトゲ当たりにピントを固定して撮影しています。降りる動作にあわせて動かしていますが、追い付かないので撮影した動画を一部拡大しています。ピントが甘くなっていますが、右前足と右後足の置き方に注目してください。

トゲは体を支えるほど強く、大きくなく感じますが、上手に四肢を配置して、ぶら下がるように引掛けながらまっすぐ降りています。

 

トウキョウトガリネズミはハマナスのトゲを利用して登る

昨日は、トウキョウトガリネズミがハマナスのトゲが痛がる動画をアップしましたが、普通は痛がるどころかハマナスを登る際に、どのように手足を使って登っているか良くわかないほどのスピードで登ります。そこで、SONY FDR-AX60のハイスピード録画で撮影しました(昨日の動画も同じです。)1回の撮影で10秒しか録画できませんし、トウキョウトガリネズミの動きが速いので動きに合わせてカメラで追うことはとても難しいですので、良く登ってくるところを狙って撮影しています。

映像を見ますと、トゲの先端を避けて横に張り出した枝のように上手に四肢を置いて、登っていることがわかります。そして、トゲとトゲの狭い隙間にうまく前足と後足を入れています。更に足裏では不安定なら、指先を曲げてトゲに引っかけているのがわかります。足を置く角度によっては、トゲの先端が足裏に当たっているような場面も見られますが、うまく指先や足裏を丸めているようで、刺さっていないのでしょう。これまで、足裏や体から血が滲んでいるようなことは見たことはありません。体重が軽いのと、手足が小さいからできる技なのでしょう。

新年明けましておめでとうございます(油断するとハマナスのトゲはやはり痛い)

新年明けましておめでとうございます。

今朝は穏やかで、私はきれいな日の出を見る事ができました。皆様はいかがでしたでしょうか?

朝晴れていましたので、当然北海道は冷え込みました。トウキョウトガリネズミの飼育ケース内に置いてある気温のデータロガーは、最低気温 -13.5℃ を記録していました。でも、トウキョウトガリネズミは、20時(-8.5℃)に行った餌交換時には元気に出てきて、飼育ケースにおいてあるハマナスに登ってきましたが、早々に生きたコオロギを持ってどこかに隠れてしまいました。

2018年にトウキョウトガリネズミがハマナスに登ることを確認して以来、飼育ケース内にハマナスも入れて観察しています。ハマナスのトゲをうまく利用して上り下りしています。観察していても痛そうにしているところは、これまで確認していませんでしたが、油断するとトゲが刺さって痛いというような仕草の映像を見つけました。器用にハマナスを利用する映像はこれから紹介していきますが、本日は「痛いっ!」という感じの映像を見てください。心情がわかりにくトウキョウトガリネズミですが、私としては「やっぱり痛いんだ」となぜか安心する映像です。

北大博物館のトガリネズミ展が終了しました。

寒くても元気なトウキョウトガリネズミ

10日前から、これまでなかったサイト攻撃が入るようになってきたので、セキュリティー対策を強化していたために書き込みが遅れました。

12月20日で、北海道大学博物館で開催していたトガリネズミ展が終了しました。今回は残念ながら、提供していたトウキョウトガリネズミやオオアシトガリネズミが途中で死亡してしまいました。トウキョウトガリネズミが会期中に死亡したのは、今回初めてです。8月に捕獲した個体なので、越冬個体で寿命だっかかもしれませんが、残念です。

新型コロナウィルスの感染拡大状況から、今回私は博物館に行くのを控えていましたので、ボランティアの学生さんに本当頑張ってもらいました。感謝です。

結局今年もトウキョウトガリネズミは1頭で、冬季の行動観察を行うことになってしまいました。

セキュリティー対策しているうちに、あっという間に年末になってしましました。みなさま、良いお年をお迎えください。

北大博物館のトガリネズミ展示の裏側(2)

左が生きたミルワーム、右はゆでミルワーム、ミルワームは、ゴミムシダマシの幼虫です。

トガリネズミの展示を見た方は、トウキョウトガリネズミに生きたミルワームが与えられているのをみて、驚く方もいらっしゃいます。

展示場におけるトガリネズミの餌はトウキョウトガリネズミ以外は、基本は丸く固められた人工餌に、おやつとして生きたミルワーム、ゆでミルワーム(缶で販売されているもの)が与えられています。北大で研究用に飼育されている個体は、人工餌が与えられていますが、私の飼育している個体には、生きたミルワームとゆでたミルワーム基本に、時々生きたコオロギを与えています。

トガリネズミにも、個体ごとに嗜好があって、人工餌への食いつきが悪く死亡する個体もいます。捕獲個体の少ないトウキョウトガリネズミでは、そのようなリスクを負えませんので、私は人工餌を使用していません。トウキョウトガリネズミに限らず、生きたミルワームを好んで食べていたかと思うと、突然ゆでたミルワームを多く食べるようになったりします。人工餌を食べるようになっても、それだけしか与えていないと突然食べなくなることもありますので、私はまだ人工餌だけでの飼育には踏み切れていません。

人工餌の方が栄養バランスが整っており、安価で交換も楽です。生きたミルワームの場合、死亡しているミルワームを取り除きながら必要なグラム数を選別するため、かなりの時間を要します。また、栄養バランスを考え、生きたミルワームにドッグフードを与えてたりしていますので、餌になるミルワームの世話もありますので、手間が結構かかります。

トウキョウトガリネズミ以外の3種のトガリネズミは、ミルワーム(生きた、ゆでの関係なく)を入れたケースの中で糞尿をしますので、残っていても再利用できることがほとんどありません。しかし、トウキョウトガリネズミは、餌を入れたケースから取り出して食べることがほとんどですし、中に入っても糞尿をすることはほとんどありません。種によってもかかる手間が異なります。1頭当たりの餌やりかかる手間は、我が家のイヌよりもかかっていると思います。

展示期間中は、毎日北大の学生さん達が2人で約1時間かけて作業を行い、維持しています。

北大博物館のトガリネズミ展示の裏側(1)

バックヤードの飼育状況

現在北大博物館で開催しているトガリネズミ展は、生体を展示していますので、通常の展示よりも多くの人に支えられて運営されています。

生体を展示している動物園や水族館も、生体を展示していない博物館も法律上では同じ博物館として扱われますが、その館の基本コンセプトにないものを展示する場合は、これまで無かった日々の作業工程や作業量が増加することになります。したがって、北大博物館は通常生体を展示していないので(水生昆虫の展示はありますが・・)、色々と関係者にご負担をおかけすることになります。

トガリネズミ展を維持するためには、期間中展示されている個体以外にバックアップ用の個体も博物館内で飼育しています。展示個体も含めこれらの個体の世話は、北大の学生ボランティアが交代で、毎日1回を行っています。2人体制で行ってもらっていますが、1時間程度かかります。

博物館の職員の方は、主にバックアップ用の飼育個体がいる部屋の日長の調整を行っていただいています。長期間明確な日中と夜が無い状況が続くと、体調に異常を来します。作業は単に時間通りに照明をつけるという行為ですが、トガリネズミの体調管理においてとても重要な作業をしていただいています。さらに、トガリネズミに変化がないか、常に気にしていただいていて、頻繁に確認していただいています。

体が小さいので飼育も楽と思われるかもしれませんが、長生きさせるためには細かい管理が必要で、中・大型動物と比べるとちょっとしたミスや油断が死亡原因となります。実は、累代飼育が可能になっていない北海道に生息している4種のトガリネズミを1ヶ月以上も生体展示するのは、かなりハードルが高いことなのです。それを可能にしているのが、博物館の職員の方と学生ボランティアの方々なのです。

飼育ケース内のトウキョウトガリネズミを見つけるポイント

トウキョウトガリネズミの観察ポイント

10月31日の午前中に、博物館の展示の様子を見に行きました。思っていたより多くの人が博物館の見学に訪れていて、驚きました。また、その中でも結構な方が興味を持って、トガリネズミ展のコーナーを見ていただいていました。ありがとうございます。

見学の方を見ていますと、入り口の展示剥製を少し見て、展示ケースをみて、トガリネズミが出ていないとそのまま通過してしまうという状況でした。パネルには少し目を向けられますが、残念ながら流れている映像には素通りでした。トガリネズミ展を目的としてこられた方は少ないので、仕方ないと思いますが、せっかくなので、世界最小級の哺乳類とシロクマの大きさの差を実感してもらいたいと思いました。

今回の映像は、新型コロナウィルス感染防止の観点から、これまでように対面で解説するのもいかがな物かと考えて、解説中心のスライドとトウキョウトガリネズミとオオアシトガリネズミの紹介の映像で構成しています。そもそも、パネルの代わりという部分も持たせているので、文字が多いスライドが多いので、そんなに見ていただけないというのは想定していましたが、立ち止まって、トガリの映像を見ていただいた方はほんの数人の方でした。

その映像には、トウキョウトガリネズミを見つけるポイントも紹介しています。もし、これから見に行かれるなら、上図の場所に注目してトウキョウトガリネズミを探してください。動いていると判りますが、じっとしていると意外を気がつきません。動いていないからといって、草の中に隠れていると思っていたら、意外と目の前に居たということもあります。

あと、探す時間はほとんどの方は10秒程度で、1分近くかける方もそんなに多くはありません。トウキョウトガリネズミは、多くの場合約30分に1回程度(時には2時間以上出てこないこともありますが)は、隠れている場所からでてきます。会場では、トウキョウトガリネズミが出ていないことをまず確かめてから、映像とパネルを見てもらえますと、その間に出てくる可能性が高くなります。もう少し時間をかけていただければと思います。ちなみに顔を出すのは数秒から5分程度とその時によってかなりのばらつきがあります。

生体展示の場合、撮影禁止とお願いしている理由

北大博物館の展示で、トガリネズミの撮影をしないようにお願いしています。それは、カメラの出す超音波がトガリネズミに強いストレスを与えるからです。超音波を当てますと、逃げたり、隠れたり、固まって動かなくなったりします。

これまで、多摩動物公園、札幌市円山動物園、霧多布湿原センター、北大博物館で展示された生きたトウキョウトガリネズミの個体は、すべて私が捕獲して提供したものです。これらの経験から、多摩動物公園以外で展示された個体は、展示されなかった個体と比較して、寿命が短いという傾向を示しています。(多摩動物公園では、色々と配慮されています。それについては、改めて・・・)

ストレスの原因は複数ありますが、展示して一番加わるストレスは、はやり撮影と考えられます。現在は、飼育小屋で飼育していますが、以前は自分の書斎で飼育していましたので、生活騒音の中で飼育していました。それに比べても、短命傾向を示すのです。一番違うのは、撮影される頻度です。細かいことを言うと、撮影するカメラの機種、ガラスを通すと超音波の強さが変わるとか色々ありますが、今は誰でもまず撮影から・・と言っても過言ではないこのご時世です。その頻度は、私が撮影する頻度とは比べようもないほどの大きな差があります。

見学者の多くは、とにかく写真を撮ることから始まります。さらに、中には撮影を始めると我を忘れて更に良い写真を撮りたいと居座る人もでてきます。常に監視者がついている訳ではなく、収拾がつかないので一律禁止にさせてもらっています。ご理解とご協力をお願いします。

私も以前は、オートフォーカスを使用して撮影していました。その時は、30分以上の撮影はやめていました。今は、基本的にはピント合わせはマニュアルにして、オートフォーカスを使用していません。動きが速いので、マニュアルでピントを合わせることは実質不可能に近いです。したがって、観察して映像として残したいと思う場面が判れば、そこにピントを合わせて待っています。実は、マニュアルにしてからの方が、トウキョウトガリネズミの動きの細かい部分まで見えてきた気がします。ピンボケ写真の枚数が相当増加しましたが、ピントが合った時は予測が的中したことを示しているので、以前よりも1枚1枚に対する価値が異なってきたような気がしています。