トウキョウトガリネズミのメニューに、ミミズは載っていない!

オオアシトガリネズミがミミズを食べることは知られていますが、トウキョウトガリネズミは、ミミズを食べません。どちらかというと嫌いです。何度か与えて見たのですが、餌としてのメニューにはミミズは入っていないようで、基本的に出会うと避けます。むしろ逃げるといった方が良いような行動をとる個体もいます。

映像は、トウキョウトガリネズミがミミズを避けている様子です。これは、2020年9月の嶮暮帰島調査での映像です。偶然ミミズが墜落函の中に入ったところにトウキョウトガリネズミは落ちたようです。私が回収するまでに、かなりの時間が経っており、すでにミミズを何回も避けていたのだと思います。映像からはカットしていますが、私が回収に来た時には中央にトウキョウトガリネズミ、周辺の溝みたなところにミミズが居たのですが、ライトを当てたら両方とも驚いて動いたようで、移動した方向が偶然同じ位置になったという状況です。

季節はずれの換毛

2月から始まった換毛?

現在飼育している個体の写真です。冬なのに夏毛のままだったのですが、今頃換毛が始まりました。

正確には覚えていないのですが、1週間くらい前に尾の回りが黒くなっていると思っていたら、2~3日前にお尻のかなりの部分黒くなってきたのを確認しました。最近は、時間に余裕がなく、餌交換だけ行っている日々が続いていましたので、いつ最初に気がついたかを記録することを忘れてしまいました。もう少し前かもしれません。

通常なら、冬毛は白い差し毛が入って毛の密度が高くなりながら、腹側は白く、背側は黒くなり、夏毛に比べて全体的に黒と白のはっきりしてツートンになりますが、今回の個体は茶色いままで、このような冬毛もあるのかと不思議に思っていました。最近、一部では地肌のピンクが見えている部分もあり、体調不良で禿げてきたのかと心配していたところでした。

例年ですと、この時期は、ゆでミルワームと生ミルワームだけになってしまうことが多いのですが、今年は生きたコオロギをほぼ毎日与えていますので、栄養バランス的には今回の個体はかなり良いはずなのですが・・・(今年度は(財)東京動物園協会の助成をいただいていますので、資金的に余裕があることも大きく影響しています)。

外の飼育小屋で飼育していますので、自然光で、寒さにも十分さらされていて、今頃換毛するということは、「日長や気温が換毛を引き起こすトリガーになっていない?」のでしょうか。現状ではどのように考えて良いかはよくわかりません。継続して変化を見ていきたいと思います。その状況の変化は、今後ブログで継続的に紹介していきます。

 

トウキョウトガリネズミの時間と人間の時間 その1

「トウキョウトガリネズミは、何時間食べないと死ぬか」いう話の続きです。多くの人によく聞かれる内容です。「2時間食べないと死ぬというのは本当ですか?」。正直、私はこの質問は好きではありません。それは、「体が小さいから、2時間食べないと死ぬのは当然」という回答を期待されていると感じるからです。ただし、この2時間説は、どの種を対象としたものか定かではありませんが、トウキョウトガリネズミを観察してと言うわけではありません。なぜなら、トウキョウトガリネズミが極めて希にしか捕獲されない時から言われていたからです。種によっても異なる可能性もあるのですが、まずは、トウキョウトガリネズミから考えることにします。

これまでは、捕獲結果から2時間で即餓死する可能性は低く、3時間から5時間くらいではないかと推察されるという話でした。少し視点を変えて、人間時間とトウキョウトガリネズミ時間(以下トガリ時間)について考えて見ましょう。

まず、人間の1時間がトガリネズミに取って何時間に相当するのかを考えてみたいと思います。単純に寿命の総時間数での対比とします。人間は50年、トウキョウトガリネズミは、500日とします。人間は人生50年と言われていた時代があり、その頃は医療も発達していませんでしたので、これを自然状態における寿命とします。トウキョウトガリネズミは、飼育下における捕獲してからの寿命の平均値です。(端数を切り捨てています。)

そうすると、人間が死ぬまでの総時間数は50年×365日×24時間=438,000時間、トウキョウトガリネズミが死ぬまでの総時間数は500日×24時間=12,000時間となります。人間の1時間:トガリの1時間=人間の総時間数:トガリの総時間数ですから、トガリ時間は、12,000÷438,000=0.0273・・・になります。人間の1時間(60分)はトガリ時間1.62分(60分×0.027)相当になります。人間にとっての1時間は、トウキョウトガリネズミにとって37時間相当になります。すなわち人間時間での1時間は、トガリ時間37時間=1.54日、2時間は74時間=3.08日、3時間は、111時間=.4.62日、4時間は148時間=6.16日、5時間は185時間=7.7日となります。

人間が飲まず食わずの場合のデッドラインは人間時間で3日間(72時間)と言われていますので、生理機能が全く同じであれば、トガリ時間で72時間は、人間時間の2時間弱となり、2時間食べないと死ぬという説は、あながち的外れでは無い感じに思えます。

しかし、人間時間の1時間弱で死亡するなら、2時間間隔で行っている捕獲調査の生存個体回収率はもっと低くなるはずです。

口周りは常にお手入れしています。

トウキョウトガリネズミは、顔を言うのか、口の周りを前足で良く拭います。しかし、その行動は一瞬に近く、普通に撮っては動きが速くよく判りません。

今回は、ハイスピードモードでその行動が撮れましたので、載せてみました。その行動は、口ヒゲをきれいにしているように見えます。口ヒゲは、空中でセンサーの様に頻繁に利用していますので、その精度を保つためでしょうか。

すっきりした瞬間

最近は、何時間食べなくても生きられるか、餓死するとか、つらいテーマだったので、今日はちょっと余談で、すっきしりした瞬間がテーマです。

すなわち排泄の瞬間です。トウキョウトガリネズミが排泄する場合は、ある程度場所を決めて行うので堆積します。しかし、多くは隅で行うのでその瞬間の撮影が意外とできません。偶然、目の前で排泄したシーンです。

多くを語る必要もないと思います。見て、そうなんだと思っていただけばと思います。

「トガリネズミは2時間食べないと死ぬは説は大げさ」という説の詳細 1

昨日は2時間間隔で捕獲調査を行うことから、2時間食べないと死ぬというのは、大げさ、正しいとは言えないという話をしました。もう少し詳しく状況を紹介すると以下のようになります。

私が一人で嶮暮帰島で捕獲調査をしている○月○日です。今回は70個の墜落函を罠として設置しています。墜落函には餌は入っていませんので、墜落函(罠)に落ちることはすなわち絶食状態になっています。

22時になりました。本日2回目の罠の見回りです。1回目は20時に行っていて、1頭も捕獲できませんでした。さて、罠の見回りに出発です。設置している最初の罠に到達したのは22時5分頃です。それから、70個を見回ります。罠は約5m間隔で1列7個で、10列で設置しています。2列目2番目と8列目3番目にトウキョウトガリネズミが罠にかかっていました。最後までみて、作業するテントまで戻ると22時35分を過ぎていました。それから、トウキョウトガリネズミを飼育するケースを作成します。敷き藁と水を入れたのち、生きたミルワームとゆでたミルワームを3gずつ計って入れます。そして捕獲した1頭目の体重を量り、飼育ケースに入れて、捕獲時間と場所と体重のラベルを作って貼ります。2頭目も同じようにして飼育ケースに入れて終了です。2頭目が餌を食べられる状態になったのは23時5分を過ぎていました。

以上が、比較的良くあるパターンです。これから考えると1頭は1回目の20時に見回った直後に罠に落ち、もう1頭は22時5分に罠に落ちたかもしれません。すなわち、罠に落ちた時点ですでに、食べていない状況に2時間の差が生じている可能性があります。更に飼育ケースで餌が食べられる状態になるまで見回り開始から最大1時間はかかっています。ここで、すでに3時間食べていない個体とまだ1時間しか経過していない個体が存在する可能性があることになります。

しかし、22時に回収された個体が落ちる前のいつの時点が最後の食事であったのかについては判りません。しかし、2時間説をとると最大2時間食べていない可能性があるということですから、18時の時点で餌を食べた個体が20時に罠に落ち、22時30分に飼育テント着き、水と餌も入った飼育ケースに入れられたのが23時5分とすると最大で5時間5分食べていない可能性もあることになります。最短の個体は1時間ということになりますが、今回は2時間以上食べないと死ぬことを問題にしていますので、20時に餌を食べた直後に落ち22時に回収されて、1時間後に飼育ケースに入れられたという計3時間が最小値となります。

よって、絶食耐えられる時間は、3~5時間という幅の中にある可能性が高いと推察されます。また、見回り時間を4時間にすると生きた個体は捕獲出来ず、3時間にすると生きている個体も捕獲出来ますが、多くは死亡個体。2時間にするとほぼ98%の確率で生かして捕獲できるという事実もそれを裏付けていると考えられます。

「トガリネズミは2時間食べないと死ぬ」説は大げさ

トガリネズミに関する一般に広まっている話の多くは、正確ではないことが多いです。あえて、間違っていると言わないのは、数少ない断片的な事例を紹介した人とそれを定説として広げている人が同じとは限らないからです。

すなわち「目の前で2時間食べなかったら死亡した」という事実は本当にありました。しかし、それが標準ということでありませんが、それが定説として一人歩きしていくということが往々にしてあるからです。

情報は、それを得た人・利用する人のバイアスがかかって広まるからです。それは、何回も述べてきたように、トウキョウトガリネズミが幻の哺乳類にされてしまったことに通じています。

そこで、改めて「トガリネズミは2時間食べないと死ぬ」というのは、北海道に生息しているトガリネズミについては大げさです。(私は、北海道に生息しているトガリネズミ4種でしか確認していませんので、トガリネズミ類全般に通じる話ではありません。今回はトウキョウトガリネズミを前提して話を続けます。)

捕獲調査の時に、2時間間隔で見回りを現在しています。それは、2時間間隔で回収することが生存個体回収率が最も高いということを経験的に得たからです。当然2時間説は知っていましたが、効率良い捕獲をしたいので回収間隔を1時間から4時間まで1時間間隔で試みました。その結果、捕獲後の作業時間確保も含め、生存個体回収率が一番成績がよかったので2時間間隔になりました。もし、2時間食べないと死ぬというのであれば、そのような結果はなりません。それは、回収を開始してから餌を与えるまで30分~1時間半程度後になるからです。すなわち、餌を食べた直後の個体でないと生き残れないということになります。

しかし、2時間間隔におけるトウキョウトガリネズミの生存個体回収率は約98%になります(220個体中3個体程度。オオアシトガリネズミと同時又はトウキョウトガリネズミが2頭同時に同じ罠に入るという特殊な例を除く)。また、トウキョウトガリネズミは生存した状態で回収できたら、数日内に死亡することはほどんどありません(正確な数字を確認できたら、また報告します)。また、飼育下における数例の確認状況ですが、餌箱に餌を食べに来る間隔も30分から60分未満が一番多かったですが、長い時には180分以上も訪れなかったこともあります。

では改めて、「何時間食べないと死ぬのか?」という問いについては、これまでの捕獲実績と飼育下の確認から、いくつか想定される状況を考慮すると幅はかなりありますが(3~5時間)、単純に捕獲間隔からすると4時間程度は食べなくても大丈夫でないとこのような捕獲成績にはならないと考えられます。

ということで、2時間食べないと死ぬというのは大げさと言えます。別の機会にもう少し詳しく説明したと思います。

オオアシトガリネズミ ヨモギに登る

 

 

 

野外飼育場の状況です。2年前まで家庭菜園のまねごとで、キュウリ、トマトなどを栽培していましたが、私はどうも家庭菜園向きの性格ではないようですので、野外飼育場にしてしまいました。

昨晩の続きですが、夜間オオアシトガリネズミは活発に動き回っていますが、思った以上に草に登っていました。2019年7月4日の20時から翌日5日の5時までに草に登ったことが11回自動撮影装置で記録されていました。

わかり安い映像は下記をみてください。積極的に草に登っていることが判ると思います。また、結構ジャンプします。同じようなところで、草に向かって飛びつこうとするようですが、毎回届かないように見えます。それでも繰り返します。ポジティブな?性格みたいです。

オオアシトガリネズミの野外飼育場での行動 

 

通常は、長さ70cm、幅35cm程度の衣装ケースで飼育していますが、それとは別に、10倍程度大きい野外飼育場で、オオアシトガリネズミを飼育したことがあります。当然、土で草が生え、流木などが置いてあります。今日はその時のオオアシトガリネズミの生き生きとした行動の映像です。

活発に動きます。地表、特に流木の上で活動する場合は、良く立ち上がって周囲の状況を確認するような行動を頻繁にしています。驚きは、勢い余って流木から飛び上がって地面まで落ちてしまうことです。オオアシトガリネズミの全長の2.5倍くらいの高さから落ちています。人間なら5mくらいから落ちている感じだと思いますが、全く平気です。落ちることに関して、基本的に恐怖感というものを持ち合わせていないかのように見えます。

野外飼育場には餌となるミミズや昆虫もいますが、与えたミルワームや水を頻繁に利用しています。餌の利用割合の変化までは調べられませんでしたが、一端飼育したので餌入れの場所はすぐに判ったようです。

オオアシトガリネズミの爪は、特に伸びやすい?

オオアシトガリネズミの2枚の写真で、前足の爪の状況を見比べてください。

1枚目の写真の状態が通常です(クリックして拡大してください)。2枚目の写真は、爪の先が曲がりかけているくらい以上に伸びていることがわかります。(付け爪しているようです。)

悪いのは私です。オオアシトガリネズミは、北海道産のトガリネズミの中では一番土を掘るために特化しており、他の種と比べても手の平はグローブのように大きいです。当然、土を掘ることで、爪が必要以上に伸びないように普段の行動で調整されています。しかし、飼育しやすいように土の代わりにチップを敷いていますし、脱出される要因になる流木などもほとんど入れていませんでした。したがって、爪が削れるような状況を作って居なかったのです。

爪が伸びすぎると歩きにくくなりますし、爪が折れるとそれが原因で感染症を引き起こす原因になります。かわいそうです。反省して、流木を入れていますが、十分とまでは行かないようで、爪はのび気味傾向にあるのも事実です。もう少し工夫したいと考えています。トウキョウトガリネズミも同様に爪は伸びますので、流木を入れたり、木の箱を入れたりしています。