これまで、トガリネズミ類で草に登るのはトウキョウトガリネズミの専売特許見たいなことを書いてきましたが、実はオオアシトガリネズミも結構頻繁に草に登っていることが判ってきました。以前に野外で木に登ったオオアシトガリネズミを見たことはありますが、草に登ったところは見たことがありませんでした。
これまでは、時々草に登ることがあってもすぐ降りてくるということを報告してきましたが、野外飼育場でオオヨモギを夜間に結構頻繁に登り降りするのを自動撮影装置で記録してから、これまで考えてきた以上にオオアシトガリネズミも草を登ることが判ってきました。
映像は、夜間も昼間も飼育下では草に登るということが記録された映像です。トウキョウトガリネズミのように、長時間草の上にいることまでは確認できていませんが、思った以上に草の上に留まっていることが判ってきました。トウキョウトガリネズミとの差は何であるのかはこれからです。でも、体重が重たいのはやはり草を利用するにはハンディになっているようです。
オオアシトガリネズミは、主に地表から地中を利用するため、草などには基本的に登らないと考えられていましたが、そうではないことが少しずつ判ってきました。これも、昨日書いたように定説(固定概念)を鵜呑みにせず、新たな視点でアプローチして考えるということが十分でなかったため、これまで検討されていなかった行動になります。北海道に生息する4種のトガリネズミにとっては、草に登ること自体は、どの種も基本行動の一部とし考えても良いのかもしれません。
そうすると、オオアシトガリネズミとトウキョウトガリネズミが共存しているのは、立体的な空間利用に明確な差があるからとトウキョウトガリネズミの研究を始めたころは考えてそのような論文も書きましたが、そんな単純なことではなく、まだ見落としているものがあるのではないかと最近は考えています。日々観察が重要だと痛感しています。