今シーズンは、気合いを入れて少し頑張りました

 10月の捕獲調査で、一応今シーズンの捕獲調査は終了です。長年研究をしてきたのですが、これまで繁殖生態(特に出産を確認できない)を明らかにすることができませんでした。このままではダメだと思い、今年はこれまで解明できない大きな要因と考えられる捕獲調査回数を増やすことと、飼育環境をより自然状態に近づけることを目標に4月~10月末まで捕獲調査と飼育環境の整備を行ってきました。

 今年は、7回捕獲調査を行いました。過去最高の調査回数でしたが(年1~2回が普通で、過去最高は年5回)、トウキョウトガリネズミが1頭も捕獲できなかった調査が3回、内2回は他のトガリネズミも捕獲できませんでした。今回は、複数の調査地(これまでの実績からは毎回捕獲できる場所でしたが・・・)で行ったこともありますが、こんなに捕獲できなかった年は初めてでした。

 また、これまでは書斎及びベランダで飼育していたのですが、色々な支障が生じ、また飼育観察方法に限界を感じていたので、小さな飼育小屋を庭に建てました。小屋は、建設会社に依頼しました。ただ、窓はありますが、外壁は合板を打ち付けてだけで、もちろん断熱材も内壁も無しです。室内の棚などは自分で作りました。冬季はほぼ外気と同じくらいになる予定です。

 努力した割には色々な障害との戦いで、成果があまりなかったのですが、しかし、今回初めてということもありましたので、これから紹介していきたいと思います。

今年の調査がやっと終わります

あくびをするトウキョウトガリネズミ

 なんと7ヶ月目の更新になってしまいました。今週末に今年最後の捕獲調査を行い、やっと今年の捕獲調査は終了というところまで来ました。

 今年は、4月から毎月1回のペース(実際は7月2回で、8月は無し)で、計7回(今週末を入れて)の調査を行いました。その間、自宅の部屋やベランダでは飼育が困難になってきたので、とうとう庭に飼育小屋を作ってしまいました。毎月の捕獲調査、毎日の世話、観察、飼育小屋の整備などをしていて、正直とてもブログまでは体力的にも、気力的にも持ちませんでした(^^;)。やっと余裕がでてきたので、これから再開します。

 7ヶ月間色々とありました。新たな発見、失敗などについてこれから紹介していきますので、またお付き合いください。

 

トウキョウトガリネズミ 気に入った花序の中で一回り

トウキョウトガリネズミを観察するために、ノラニンジンやセイヨウノコギリソウなどの散形花序、散房花序をしている植物を飼育ケースの中に入れます。捕獲地には無かった植物を入れることになる場合が多いですが、飼育している場所で生育している観察しやすい植物を今は選んで入れています。これらの植物は小さな花が集まっているため、トウキョウトガリネズミの体をうまく支えてくれるようで、結構気に入っているように見えます。どれでも良いわけでは無いようで、入れた複数の花序をすべてチェックした上で、最終的に気に入った花序の中をぐるぐる回って収まり具合を確認しているようです。気に入れば長時間いるようになります。


トガリネズミがカメラ撮影が苦手な訳

12月2日まで行っていたトガリネズミ展で、トガリネズミの撮影を禁止にさせてもらっていました。実は、トウキョウトガリネズミやオオアシトガリネズミなどがハンティングなどで出す音(主として周波数帯 5~10kHz)とカメラがピンセットを合わせるために音がほぼ同じなのです。したがって、多くの人に撮影されると大変なストレスをトガリネズミたちに与えることになるからです。トガリネズミが出す音がどのように使われているかは、現在複数の人が研究中で詳細はこれからですが、いずれにしてもカメラの出す音波はとても苦手なことは確かのようです。

トウキョウトガリネズミがコオロギを捕獲する際に出している主な周波数帯 5~10kHz

カメラ(EOS80D)の出す周波数帯5~10kHz

トウキョウトガリネズミが罠に落ちにく理由

トウキョウトガリネズミが、罠に落ちにくいので慎重だと書きましたが、オオアシトガリネズミと比べて罠に落ちにくい理由の一つには、後ろ足の使い方にあると思われます(添付動画)。物の角に後足の指を引っかけて、体を支えることができるからです。

オオアシトガリネズミはそのような行動は見られず、後足は前にしか伸びず、自ら飛び込みでいく感じです。でも、ヒメトガリネズミでもトウキョウトガリネズミと同じように後足の指で物の角に引っかけているのを目撃しました。では、なぜ、トウキョウトガリネズミとヒメトガリネズミの捕獲に差がでるかはこれからの課題です。ちなみに、エゾトガリネズミについてはまだ確認できていません。

 

北大博物館におけるトガリネズミ展が無事終了しました。

北大博物館で10月12日から開催していた「北海道のトガリネズミ」展が、12月2日に、当初より3週間会期を延長して無事終了しました。終了翌日から出張続きでご報告できず失礼しました。

たくさんの方に来ていただきありがとうございました。複数回見に来ていただいた方も結構いたようで、本当にありがとうございました。

無事、国内初、いや世界初の北海道産のトガリネズミ4種の生体展示を終えることができたのも、ひとえに、飼育を担当してくれたボランティアの学生さんたちのおかげです。改めてお礼を申し上げます。ボランティアさんの協力がなければ、到底維持できない展示でした。

見に来ていただいた方々とは、いつかまたどこかで、生きたトガリネズミたちとお会いできることを楽しみしております。それまでは、このサイトをよろしくお願いします。

展示終了後、大舘先生(右)と

 

 

 

トウキョウトガリネズミも木から落ちる?

トウキョウトガリネズミが、草の上で休んでいることはすでに紹介しましたが、入れてある草の状況によっては、草にぶら下がって休息をしている時もあります。人間にもあるように、完全に眠りに落ちた瞬間、体の力が抜けビックとします。トウキョウトガリネズミでも希ですが、ビックとして落ちかけるのを見ることがあります。さらに極めて希ですが、結構な距離を落下することがあります。落ちる時の映像は中々撮れませんが、偶然撮れた映像です。さすが、反応は俊敏で事なきを得ています。

トウキョウトガリネズミの日常     「僕は慎重派!」

トウキョウトガリネズミの夜の行動を観察するために、野外ではセンサーカメラ、飼育下では赤外線カメラを設置します。オオアシトガリネズミとトウキョウトガリネズミでは、種として行動に大きな差が見られます。

飼育下では、両種ともカメラに限らず、新たに何かを入れると必ず確認しにきます。最初はちっと遠巻きしていますが、最後は触って確認します。野外でも基本的には同じで、罠(墜落函)に落ちるのも、このように自分の行動圏に何か変化が起こったようなので、確認しようとする過程で落ちます。

以下の3つの動画は、飼育下のトウキョウトガリネズミが積極的にカメラを確認する状況、トウキョウトガリネズミとオオアシトガリネズミが罠に落ちる状況です。いずれも、行動の途中は編集して時間は短縮していません。トウキョウトガリネズミはオオアシトガリネズミと比較すると行動が慎重であることがわかります。

トウキョウトガリネズミが、カメラを確認する映像

トウキョウトガリネズミが罠を確認する状況

オオアシトガリネズミが罠を確認??、落ちる状況

トウキョウトガリネズミの日常     「なぁに?・・・」

餌やりなどの世話で、飼育ケースを開けます。飼育しているケースによって開け方が異なるのでその反応は様々ですが、草茎の中で休んでいる時に、そっ~とあけられた場合、「なぁに?・・・」、という感じで、顔を出します。何回か確認してから安全と判断したのか、草からでてきます。長時間休憩していた時は、まず排泄をすることが多いです。

今北大博物館で展示しているトウキョウトガリネズミ、ヒメトガリネズミ、エゾトガリネズミの飼育ケースには逃亡防止のため、隙間に養生テープが貼ってあります。飼育ケースを開けるためにこの養生テープを剥がすと、「ビリ」と高い音が出ます。どうもこの音は苦手なようで、逃げたり、隠れたり、飛び出てきたり、過敏な素速い反応が見られます。