トウキョウトガリネズミを見分ける 1 <直接トウキョウトガリネズミとオオアシトガリネズミの体格を比較する>

トウキョウトガリネズミでは無いかと、時々問い合わせを頂くことがあります。その約95%がオオアシトガリネズミです。ネットで検索すると大きさの書かれ方が間違っていたり、曖昧な書き方だったりしますので、トウキョウトガリネズミを発見したと思われる見たいです。

これから数回に分けて、トウキョウトガリネズミを見分けるための基礎知識を整理したいと思います。問い合わせの際に同定に必要な観点も紹介しますので、ぜひ参考にして頂けばと思います。

今回は、オオアシトガリネズミとの体格差をまず確認をしてください。死体による比較写真は時々ありますが(このHPの基礎情報にもあります)、今まで生きた状態でトウキョウトガリネズミとオオアシトガリネズミが同じ画面でサイズ比較した映像はないと思います。そもそも、野生下でも生きた個体を同時に見る事自体まず無いと思いますが、生きている状態をまず見て頂けるとその大きさの差がはっきりわかると思います。

映像の後半に、生きたミルワーム(全長約2cm)が入れてありますので、それを基準に大きさを確認してみてください。下の写真はその場面を拡大していますので、参考にしてください(クリックすると大きくなります。なお、トウキョウトガリネズミは、小さいアクリルケースに入れた上でオオアシトガリネズミを放したケースに入れてありますので、アクリル板2枚越しの映像になっているため、ぼけています。)

左:オオアシトガリネズミ、右:トウキョウトガリネズミ

オオアシトガリネズミはハマナスに登らない?

トウキョウトガリネズミが捕獲されるハマナスが生育している場所で、オオアシトガリネズミも捕獲されます。オオアシトガリネズミは、ハマナスに登るかといいますと、登ったところは見たことがありません。

ハマナスを入れて、両種を同じ条件で10分間飼育ケースに入れたところ、トウキョウトガリネズミは8分後にはハマナスに登りましたが、オオアシトガリネズミは最後まで登らないどころか、最後までハマナスの枝には興味を示さなかった感じでした。急に細くなるところには、行かないという印象をうけました。

両種とも初めての環境ですので、必ず隅々まで確認作業を行います。まずは、地表と物陰や隙間を探索します。トウキョウトガリネズミは、時間が経つと必ず草などがあれば、登って確認する行動が見られますが、オオアシトガリネズミは土を掘ったり、草の中に潜ったりしますが、積極的に草に登って確認するような行動は見られません。オオアシトガリネズミが、全く草に登らないわけではありません。また、野生下で、木に登ったオオアシトガリネズミを見たことがありますが、トウキョウトガリネズミと比較しますと、普段から積極的に草などに登るような行動は見られません。オオアシトガリネズミは、ハマナスを登るのかはまだわかりませんが、ハマナスのトゲを利用して登るような器用なことはできないのではないかと私は勝手に思っています。時間が経てば登るのかもしれませんので、これからも試してみたいと思います。

トウキョウトガリネズミを見ていますと、地表の安全確認に納得するまでは、登るという行動は後回しになっているように見えます。草の上の危険性は、地上よりも少ないと考えているかのようにも思えます。

 

なぜ、最近ハマナスの話が多いのか

ハマナスの葉の下に隠れている?トウキョウトガリネズミ
ハマナスの葉の下に隠れている?トウキョウトガリネズミ

最近、なぜハマナスの写真や動画が多くなったのか、不思議に思っている方もいるかと思います。

2018年以前は、ハマナスが生育しているところでトウキョウトガリネズミが捕獲されたことはありませんでした。また、2019年に最初にトウキョウトガリネズミがハマナスに登った時は、捕獲した個体を放獣した時で、一番近いところにハマナスしか無かったので偶然ではないかと思いました。メインのページに載せている写真がそれです。その後飼育下や野外での観察では、ハマナスの選好性の有無を判断できるまでのデータはそろっていませんが、他の植物と区別なく登っているように見受けられます。

トゲが捕食者から身を守ってくれますから、ハマナスを積極的に利用するとも考えられますが、実は、登ってじっとしているところはトゲが無いところなのです。ハマナスが群生していれば、確かにキツネなどからは身を守りやすいかもしれませんが、上空からはトゲが無いので他の植物の上にいるのと大して変わりません。また、キツネの歩きかたを観察していますと、トウキョウトガリネズミが草の上にいる位置は意外とは死角になっているような気がします(詳しくは別の時に書きます)。我々人間に取っては、ハマナスのトゲは障害物と思いますが、トウキョウトガリネズミに取っては、障害物とか身を守るものとは捉えていないようにも思えます。

ハマナスは木本類ですので、草本類よりも茎や枝が太くしっかりしており、葉も大きく密集していますから、隠れたりするには草本類よりも状況が安定しているため、積極的に利用しているとも考えられます。人間目線だけで判断してしまいますと、トゲがトウキョウトガリネズミの身を守ってくれますから、積極的に利用しているのだという単純な理解になってしまいますが、それだけでは無いような気がします。

花をつけているハマナス
トウキョウトガリネズミが捕獲されたハマナスが密集している環境

 

-15.5℃でも元気なトウキョウトガリネズミ

本日のトウキョウトガリネズミ

年末から現在まで真冬日が10日以上続いています。今朝の車の温度計では-16℃でした。この時期としては、例年になく寒い日が続いています。ハマナスの実もしおれてしまい、フリーズドライ状態になっています。

フリーズドライ状態になってしまったハマナスの実

 

 

12月31日21時から1月6日21時の間の最低気温

トガリネズミの飼育小屋は断熱をしていませんので、外気より少し暖かいという程度です。今日の20時30分に餌替えを始めた時のトウキョウトガリネズミの飼育ケースの内の気温は-8.5℃でした。12月31日21時から温度・湿度のデータロガーを設置していますが、本日の21時までの最低気温は、1月1日の朝の-15.5℃でした。

今回で2冬目になりますが、昨年よりも寒いです。私が作業するときだけ石油ストーブを焚きます。小屋の壁の1.5mほどの高さにつけている温度計が、通常なら30分ほどで10℃以上になるものですが、ここ数日は10℃を示すことがありません。それほど、冷え切っているということですが、トウキョウトガリネズミもオオアシトガリネズミも私が餌替えに行くと顔を出します。トウキョウトガリネズミは短時間ですが、ハマナスの木にも登ってきます。でも、その時間は0℃以下になってからは数分です。しかし、元気です。低温自体は、全く障害になっていないようです。

 

 

 

 

 

 

 

ハマナスの実や枝葉は、トウキョウトガリネズミが乗ってもビクともしない

ハマナスの実は、少し大きめのプチトマトほどの大きさで、表面は堅くしっかり付いていますので、体重2gのトウキョウトガリネズミが乗ってもビクともしません。枝もビクともしませんが、1枚の葉の上にのるとさすがに少しゆれますが、それでも不安定というほどでもありません。

よく見てみるとトゲのあるところと無いところをうまく使い分けているようです。ちなみに、ハマナスの実は熟してもトウキョウトガリネズミは食べません。

長時間留まっているところにはトゲは無い

トウキョウトガリネズミは、ハマナスのトゲを利用して登り降りをしていますが、ハマナスの枝に上に居る時は、トゲが無いところやまだ堅くなっていないところに長時間留まっています。やはり、堅いトゲの先が当たっているような状態は、痛いのでしょう。

映像を見ていますと、トゲが無い茎の部分を利用しているのがわかります。特に降りる時は、トゲがある茎を利用するだけではなく、トゲの無い枝を利用して移動や降りたりします。トゲに触らないで移動できるルートがあれば、それを選んでいるように見えます、

ハマナスのトゲを利用して降りる

ハマナスのトゲを利用して登ることを昨日紹介しましたが、降りる時もトゲを利用しています。映像は、昨日同様にハイスピード録画で撮ったものですが、動きが速く、オートフォーカスだと追い切れませんので、最初にトウキョウトガリネズミがいた茎のトゲ当たりにピントを固定して撮影しています。降りる動作にあわせて動かしていますが、追い付かないので撮影した動画を一部拡大しています。ピントが甘くなっていますが、右前足と右後足の置き方に注目してください。

トゲは体を支えるほど強く、大きくなく感じますが、上手に四肢を配置して、ぶら下がるように引掛けながらまっすぐ降りています。

 

トウキョウトガリネズミはハマナスのトゲを利用して登る

昨日は、トウキョウトガリネズミがハマナスのトゲが痛がる動画をアップしましたが、普通は痛がるどころかハマナスを登る際に、どのように手足を使って登っているか良くわかないほどのスピードで登ります。そこで、SONY FDR-AX60のハイスピード録画で撮影しました(昨日の動画も同じです。)1回の撮影で10秒しか録画できませんし、トウキョウトガリネズミの動きが速いので動きに合わせてカメラで追うことはとても難しいですので、良く登ってくるところを狙って撮影しています。

映像を見ますと、トゲの先端を避けて横に張り出した枝のように上手に四肢を置いて、登っていることがわかります。そして、トゲとトゲの狭い隙間にうまく前足と後足を入れています。更に足裏では不安定なら、指先を曲げてトゲに引っかけているのがわかります。足を置く角度によっては、トゲの先端が足裏に当たっているような場面も見られますが、うまく指先や足裏を丸めているようで、刺さっていないのでしょう。これまで、足裏や体から血が滲んでいるようなことは見たことはありません。体重が軽いのと、手足が小さいからできる技なのでしょう。

新年明けましておめでとうございます(油断するとハマナスのトゲはやはり痛い)

新年明けましておめでとうございます。

今朝は穏やかで、私はきれいな日の出を見る事ができました。皆様はいかがでしたでしょうか?

朝晴れていましたので、当然北海道は冷え込みました。トウキョウトガリネズミの飼育ケース内に置いてある気温のデータロガーは、最低気温 -13.5℃ を記録していました。でも、トウキョウトガリネズミは、20時(-8.5℃)に行った餌交換時には元気に出てきて、飼育ケースにおいてあるハマナスに登ってきましたが、早々に生きたコオロギを持ってどこかに隠れてしまいました。

2018年にトウキョウトガリネズミがハマナスに登ることを確認して以来、飼育ケース内にハマナスも入れて観察しています。ハマナスのトゲをうまく利用して上り下りしています。観察していても痛そうにしているところは、これまで確認していませんでしたが、油断するとトゲが刺さって痛いというような仕草の映像を見つけました。器用にハマナスを利用する映像はこれから紹介していきますが、本日は「痛いっ!」という感じの映像を見てください。心情がわかりにくトウキョウトガリネズミですが、私としては「やっぱり痛いんだ」となぜか安心する映像です。

北大博物館のトガリネズミ展が終了しました。

寒くても元気なトウキョウトガリネズミ

10日前から、これまでなかったサイト攻撃が入るようになってきたので、セキュリティー対策を強化していたために書き込みが遅れました。

12月20日で、北海道大学博物館で開催していたトガリネズミ展が終了しました。今回は残念ながら、提供していたトウキョウトガリネズミやオオアシトガリネズミが途中で死亡してしまいました。トウキョウトガリネズミが会期中に死亡したのは、今回初めてです。8月に捕獲した個体なので、越冬個体で寿命だっかかもしれませんが、残念です。

新型コロナウィルスの感染拡大状況から、今回私は博物館に行くのを控えていましたので、ボランティアの学生さんに本当頑張ってもらいました。感謝です。

結局今年もトウキョウトガリネズミは1頭で、冬季の行動観察を行うことになってしまいました。

セキュリティー対策しているうちに、あっという間に年末になってしましました。みなさま、良いお年をお迎えください。