草を渡り歩くのが日常のトウキョウトガリネズミ。でも、油断すると草のたわみについて行けないこともある。おっとと・・落ちなくてよかった・・。
トウキョウトガリネズミのあくび
現在行っている北大博物館の「北海道のトガリネズミ」の展示では、12時から13時かけて餌やりなどの世話を行うので、この時間帯は比較的簡単にトウキョウトガリネズミを含む4種の姿を見ることができます。
その時に見られるのは、餌を食べたり、糞をしたり、ケースの中を移動したりする行動になります。常に見られていることもあり、ゆったりとした姿を見せることはありません。常にせわしく動いているという印象を受けると思います。しかし、飼育をしていると、実は意外とリラックスしたゆったりとした行動も見られることがあります。その一つに目覚めた直後あくびがあげられます。こんなに口が開くのかということと、歯茎まで見られるので少し驚きます。通常、餌を食べている行動を見ても、歯や歯茎まで見えることはありません。トガリネズミの歯の先が赤いという特徴を生きたまま確認できる希な場面です。
常時飼育している私でも、あくびをする場面をそうそう見られる訳でもありませんし、写真や映像が撮れるような場所やタイミングであくびをしてくれることもなかなかありません。偶然、最近撮れたアップの映像が以下の2つです。皆さんが見ていないところでこんな行動もしています。
トウキョウトガリネズミの冬毛
トウキョウトガリネズミは、10月に入ると冬毛に徐々に変わり始めます。
腹面が夏毛より明らかに白くなり、背面は茶から黒ぽっくなります。
換毛は尻部から始まり、頭部に向かって広がっていきます。室内で飼育していると寒くないので写真のようなはっきりとした冬毛にならないことが多いですが、気温が下がると換毛は行われます。展示中に始まるかもしれませんので、体毛の変化についても注意深く見てください。境目は、意外とはっきりわかります。
オオアシトガリネズミの寝姿
トウキョウトガリネズミの寝姿(2)
トウキョウトガリネズミの寝姿(1)の写真から、イヌやネコが丸まって寝ている様子と基本的に変わらないということがわかります。実はあのようなところに寝るのは暑いからです。トウキョウトガリネズミは北海道に生息するトガリネズミ4種の中でも特に暑さに弱く、気温(室温)が25℃を超えると草の中から出てきて、草の上や途中で暑さをしのいでいると思われる行動をよくとります。下の写真の左側の白いものは保冷剤を入れた袋です。この夏はこのように保冷剤の近くで涼んでいました。
しかし、下のような寝姿はこれまで10年近く飼育していますが、今年初めて見ました。最初死んでいると思いましたが、よく見るとお腹が動いていたのでびっくりしました。すべての個体が、こんな寝方をしているとはとても思えません。
飼育して良くみられる寝姿は、以下のような状態です。ぶら下がっていたり、草の間にはまっていたりします。ぶら下がっているのに本当に寝ているのかと思いますが、時々熟睡してしまい草から落ちることがあります。観察していると目の前で本当に油断して前足の力抜けた感じで落ちるのです。そして、慌てた様子で移動します。その行動はいつもの草から落ちる動作を明らかに異なります。いずれにしても器用な寝方をしているものだと関心します。
トウキョウトガリネズミの寝姿(1)
北海道のトガリネズミ展を北大博物館で開催中
10月12日から11月11日まで、北海道大学博物館で「北海道のトガリネズミ展」を開催しています。
https://www.museum.hokudai.ac.jp/display/special/13911/
昨年のトウキョウトガリネズミ展につづき、北大低温研の大舘先生と共同で今年は北海道に生息するトガリネズミ4種の生体展示を行っています。トガリネズミ4種の生体展示は、国内初(もちろん世界初のはず)の展示です。
これまで4種の展示がされなかったのは、トウキョウトガリネズミが近年まで生きて捕獲することが困難であったこと、また、同時に4種を確実に捕獲し、長期間飼育するという技術も十分確立していなかったからです。
今回は昨年のトウキョウトガリネズミ展より、見てもらえるチャンスが増えるように展示にも工夫をしましたので、ぜひ見に来てください。
展示期間中は、大舘先生や私が解説していることもありますが、常にいるわけでないので、見所や裏話などを紹介していきますので、参考にして見ていただければと思います。