哺乳類については、図に示したように陸生と海生で、陸生では小型・中型・大型計測部位や測り方が若干異なります。
前回「頭胴長=体長」と書きましたが、実際は、陸生は頭胴長、海生は体長を使います。いずれも吻端から肛門までを計測しますが、陸生で体長を使うことは最近はありません。また、大型では赤点線のような測り方をする場合もあります。大型哺乳類は、背骨を伸ばして計れないからです。
尾長は、肛門の付け根か尾骨端までを計ります。体毛は摩耗したりするので体毛は測りません。前足長や後足長も、爪は伸びたり摩耗したりするので計りません。「踵から爪の付け根まで」となります。
分類群によって、種の同定に重要となる部分が異なります。ネズミ類やイタチ類では、尾長の長さが同定するために重要な要素となります。また、トガリネズミ類やネズミ類は全長が重要な要素となりますが、大型哺乳類では、全長は重要な要素ではありませんので、全長を測ることや全長という表現は基本的に使いません。
海獣類は吻端から肛門までを体長(=頭胴長)としていますが、尾が無いからです(尾に見えるのは足)。すなわち体長=頭胴長=全長ということになります。しかし、全長とは使いません。大型哺乳類では、尾があっても、短かったり、尻に沿って垂れていたりすることから、大型哺乳類で体長を使用するとイメージ的に体長(頭胴長)=全長と捉えてしまう人も多いです。
以上を整理しますと「吻先から尾の先まで一直線に伸ばした状態で計測する。吻端から肛門までを頭胴長、肛門から尾端までを尾長とする。尾長は摩耗や伸びたりする毛は計らず、尾骨端までとする。また、頭胴長+尾長を全長とする。なお、海棲哺乳類については、頭胴長を体長とする。」ということになります。
「吻先から尾の先まで一直線に伸ばした状態で計測する。」ということと、「哺乳類の大きさとは頭胴長なのか、体長なのか、全長なのか」という2つのことが、曖昧な状態の人が多いというのが現実だと思います。そもそも、死体は大体が丸くなっていることが多いですので、まず小さく見える傾向にあることも影響していると思います。したがって、大体の大きさを測ってもオオアシトガリネズミをトウキョウトガリネズミと思ってしまう方も多いと実感しています。