トウキョウトガリネズミは、どのように見えているか 2

動物が目で物を見るという行為は、見た物が自分にとってどのような物かと認識する行為と置き換えられます。したがって、見えたものが、食べ物か、危険な物かなど、自分にとってどのような物であるかを認識して、取るべき行動を判断するということになります。

ワシタカ類の中には、空中から草の中にいるネズミを確認して捕獲できますが、ガンやハクチョウ類などでは、ネズミを食べる必要がないのでそのような能力は多分もっていません。すなわち種ごとに、生活様式によって「見える物の大きさや内容」=「認識できる内容」が異なることは明らかです。したがって、基本的に我々と同じものを見ていても、見えている範囲や認識している内容は同じでないことが想像できると思います。トウキョウトガリネズミは立ち上がってもせいぜい6~7cm程度です。したがって、身長170cmの人間を見るということは、人間が高さ40m位(10~11階程度)のビルを見上げているようなものです。

そして、じっとしていると数センチ前にいるコオロギも認識できずに良く通過してしまいますので、遠いものを認識できる目の能力はとても低いと推察されます。動いていれば、動く物体として認識はするでしょうが、人間の全体の形を目で認識しているとは考えにくいのです。したがって、イヌやネコなどが、飼い主とそれ以外などというような個人を区別して生じるような馴れというのを想定しているのであれば、それは無いと言えるでしょう。

これだけを聞きますと、「目が見えなくて、人馴れしないとか言うけれど、手乗りするトウキョウトガリネズミもいるから、おかしい」と思われる方もいると思います。しかし、人間からすると視力は確かに良くありませんが、それは物を認識する方法が異なるだけですし、本来人と接することはありませんので、人に馴れるということ自体の概念を持っていませんので、手に乗る行為が馴れたというのは人間側の都合の良い解釈だということになります。

では、どのように考えたら良いのでしょうか。

 

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