嶮暮帰島のコシジロウミツバメの営巣状況調査は、2000年に調査して以降再調査していません。現在も2000万ペアーを維持しているかは不明です。体感的には、相当少なくなったような気がします。
嶮暮帰島に生息しているコシジロウミツバメの個体数を推計するには、嶮暮帰島にどれだけの巣穴があり、その巣穴の何%が利用されており、どれくらいが繁殖に成功するかということを、嶮暮帰島をいくつかのブロックに分けて、その中からサンプルを抽出して算出します。
巣穴の総数は、巣穴が掘られている環境ごとの巣穴の密度が判れば良いですので、巣穴の数を数えるだけですので、これは比較的簡単です。しかし、その巣穴のどれだけ利用しているのかを調べるのは大変です。そこで、多数の巣穴の状況を調べるために使用したのが、楊枝です。巣穴の前に楊枝を立てておいて、一晩でそれが倒れていたら、利用されている巣であると判断します。理由は、孵化して雛がいたら原則として毎日餌を運んできますので、必ず巣穴に入るため楊枝に触れて倒すからです。これは、先人によって、考案された方法です。
また、巣穴に入っていく様子も夜間なので良く見えませんので、確認するために使用したのが5台のSonyのビデオカメラで、ナイトショットという赤外線で撮影できる初期のビデオカメラです、その当時は、現在みたいなセンサーカメラなどは普及していませんでしたので、自動撮影すること自体が大変でした。深夜に一度はビデオテープを交換しないといけませんでした。
しかし、営巣状況を確認するには、巣穴に手を突っ込んで、巣穴にいる鳥を引っ張りだして、確認するしかありません。もちろん、ランダムに巣穴を選びますが、嶮暮帰島全体で20個程度の営巣確認ができるくらいまで、手を突っ込むことになります。巣穴は曲がっていたり、細くなっていたりして、奥まで届かないこともあり、20個体程度の営巣を確認するのに手を突っ込む穴の数は、その5倍くらいになります。
工業用のファイバースコープで穴の中を調べたこともありますが、曲がっているとレンズが土の中に刺さるとか、コシジロウミツバメが土をかけてきますので、結局手をつっこんで捕まえるということが一番確実ということになります。手袋はしていますが、腕はむき出しなので、擦り傷で赤くなり、ひりひりします。さらに、イラクサやアザミが群生している中にも穴がありますので、これらに触れないように頑張りますが、結局は触れてしまい、痛がゆくなり、結構体がぼろぼろになる調査です。更に、穴の中に親鳥がいる場合は、手を突っつかれます。最初は、びっくりして痛いと思いますが、実は大したことはありません。馴れてきますと、突っつかれたらラッキーと思うようになります。手を突っ込む回数が減るからです。いや、かわいい幼鳥に会えるからです。
何れにしても、一般の方からは変態か?と思うような体を張った調査です。